「見切り発車」修行場。二次創作、オリジナルに関わらずジャンル混合短文置き場。 版権元とは一切関係ありません。
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4主人公と炎の英雄。脱出編。
・・・これ書いたの、1年以上前だということを改めて実感。
「拾ってきたとはどういうこと?」
「どうもこうも言葉通りなんだよな、サナ」
「もう少し分かりやすく言って頂戴」
「いや、これでも精一杯」
テントの前でやり取りを交わす男女。困ったように見えて実は全く困った顔をしていない男性と、心底困った顔をしている女性の二人組みだ。
「あなたはもう少し責任感というものを」
「いや、充分」
「嘘おっしゃい。それなら黙って3人だけでハルモニアに潜入だなんて」
「まあ、結果として成功したんだし」
「それは結果でしょう!」
サナの大声が平原に響き渡った。周囲の小動物がかさかさと逃げていく。
「話を最初に戻しましょうか」
「ああ」
「で、あの子はどうしたの?」
「だから。拾ってきたんだ。ハルモニアの神殿で。真の水の紋章と一緒に」
あっけらかんと言いのける青年に、サナはがっくりと肩を落とした。
「話が見えないんだけど」
真なる水の紋章は確かに少年の指差した先にあった。
ワイアットが無事にそれを宿すことに成功し、その帰り道。
「なあ」
炎の英雄が少年に声をかけたのが先だった。
「はい」
「どうしてこんなところにいるんだ?」
「見ての通りとしか」
「出してやろうか」
「出来るものなら」
少年のその切り替えしに、青年は首をかしげた。
「俺の持つ紋章の力ならできると思うが」
「ハルモニアでそれが簡単に通用すると?ましてやここは、真なる水の紋章を安置するほどには重要なところです」
「確かに」
と。納得しようとしてはたと気付く。それならば、そのような「重要な場所」に閉じ込められている少年は一体何者なのかと。
「ただ」
「ただ?」
「私は、ここにいるわけにはいかないのもまた、事実です」
最後の方は少し掠れ気味に、少年は呟いた。
その言葉に炎の英雄は、得意げに微笑んだ。
「なら、出してやる」
炎が彼の周りを舞う。彼の衣装の一部のように。いや、彼自身の一部のように。
「今更騒ぎを起こしたところで一緒だ。そうだろゲド、ワイアット?」
「勝手にしろ」
「・・・」
爽やかな笑顔で振り返った青年に、ワイアットは半ば自棄を起こし、ゲドは無言で目を逸らした。もう好きにしろ、と。
「まあそれで、その檻は中からはともかく外からの衝撃には弱かったみたいで。結構あっさりと破って連れてきたって訳なんだ」
「・・・それで全部?」
「ああ、全部だ」
話し終えた青年の名を呼ぶ声が背後から。振り返ればそこには話の中心人物がいた。
「ゲドとワイアットが、あなたを連れてくるようにと」
「なるほど。んじゃ行ってくるよ、サナ」
「ちょっと待ちなさい」
静止の言葉は聞かない。少年の背中を押しつつ彼はサナの元から駆け足で去っていく。
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