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「見切り発車」修行場。二次創作、オリジナルに関わらずジャンル混合短文置き場。                                         版権元とは一切関係ありません。
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 アリアンロッド・リプレイ・ルージュ
 盛大ネタバレいわゆるラスボス後。ダイナストカバルとその家族?




 自身のシンボルとしてデザインした手持ちサイズの石像の瞳の部分が青色に輝く。
 ゾハールの眷属が徐々に消え行くのを見守り、後片付けと救援活動に前線に出てきていたダイナストカバル大首領その人は、仮面の奥からそれを見て慌てて懐から携帯大首領を取り出した。
 この色の点滅は、レント・セプターの携帯大首領からの連絡だ。
 全てが終わったことの報告のつもりだろうか、このような慌しい時にまできっちりと連絡をよこす部下に苦笑しつつも彼を労う言葉を考えながら通信を繋げた。

「あーもしもし、こちら大首領」

 いつも通り腰に左手を当て右手で軽く携帯大首領を持ち、その報告を待つ。
 しかし即座に返ってくるはずの部下の反応が、何故か無い。数瞬の間が過ぎる。電波状況(?)でも悪いのだろうか。

「あー、もしもし?こちら・・・」
「・・・・・・・・・あ、あのぅ・・・・・・・・・その」

 ようやく携帯大首領からおずおずと聞こえてきたその声は、柔らかくも透明感のある綺麗なソプラノの声で――

「えーっと、あの・・・・・・おとう、さん・・・ですか?」

 一瞬にして大首領と呼ばれる男から全身の力が抜けてしまったことは、言うまでも無い。



「あ、あのっレントさん・・・これ、壊れちゃったんでしょうかっ」
「どうかしましたか?」
「あの、通信を始めてちょっとしたら、向こうから『ガチャンッ』ってなにかが盛大にぶつかったような音がした後、『ガランガラン』って何だか変な雑音がして、そのまま何も聞こえなくなってしまったんです・・・」

 携帯大首領を持ったままおたおたと説明するノエルの姿にレントは少しだけ困った顔をしつつも、彼女からそれを受け取って向こうに呼びかける。

「大首領」

 反応はない。

「大首領」

 反応はない。

「大首領」

 反応は――

「・・・・・・・・・レントか」
「その通りでございます大首領」

 あった。
 携帯大首領の向こう側からは動揺を隠せない上ずった声がレントに届く。

「お、お前、そのだな」
「はい」
「とっ、突然あのような!あのような、連絡などをよこすとはっ!そんな馬鹿なはずは、だなっ!」

 かなり動揺しているようで、最後まで言い切れない挙句に文章になっていない。
 偉大にして尊敬すべき存在である大首領の尋常ではない慌てぶりに対しても、どこまでも冷静にレントは答えのない問いかけへの答えを返した。

「彼女は、大首領のご息女であるのでしょう?」

 あまりにもストレートな言葉。
 求めて止まなかった彼女の存在を、しかしどこかで恐れていたそのことを、まざまざと知らされた。

 ノエルは確かに彼と、その妻ノイエの娘だ。

 だが彼ら両親は、しかし両親と呼べぬほどの業をかの娘に課してきた。それが許されるはずも無い。
 彼は、ノエルを一人置き去りにしたのだ。どのような事情があろうとも、彼はノエルを捨てたのだ。
 そして彼はまた、既に表には出られぬ罪人であるのだ。神殿に抗う悪人であるのだ。

 どのようにして、彼女の前に姿を表すことができようか――

 彼女を助ける時に付けていた仮面とて、一つは神殿の前に顔を出せぬことがあったわけだが――もう一つの理由としては、ノエルに合わせる顔がなかったからだとも言える。

 そう、こうして改めて突きつけられると、彼はようやく自身が何を思っていたのが理解できた。
 怖かったのだ――ノエルと、自分の娘と顔を合わせることが。

「・・・しかし、余は」
「大首領」

 言い訳を口にしようと彼が言葉を選んでいると、それを遮るように部下からの声が届いた。
 大首領たる彼の言葉を遮る――それは恐らく生まれた直後のレントの姿からは考えもつかなかったことに違いない。

「子が父と会うのに、なんの理屈がいりましょうか」

 当たり前のことのように、平然と述べられたその言葉――その言葉に、大首領は絶句した。

 あまりにも、単純で。
 あまりにも、無邪気で。
 あまりにも、簡単すぎる。
 世界に普遍の――当然の帰結。

 そして、それを生まれて数日で出すことの出来た、己の部下の成長。

 腹の底から震えるものがあった。心の奥、その魂そのものから震えるものがあった。
 それを押さえることなど、到底出来そうもなかった。

「ふっ、ふふ・・・・・・ははは!」
「・・・大首領?」

 何が起こっているのか理解できぬのだろう、レントは困惑の声を大首領に向けた。
 きっと自身がどれだけのことを言ったのかも彼には分かっていないのだ。今は、まだ。

「レントよ。ノエルと・・・我が娘と代わってくれぬか。少しでも話がしたい」
「はい、仰せのままに」

 今はただ、ようやく与えられたその時間を――彼女と共に。






―――――
やっちまったぜシリアス大首領その2 (2がでてしまった・・・!
大首領はお茶目な人だと思います。
そーめん伯爵の台詞が使いたかっただけとも言います。彼はそんなに好きじゃないけど、あの台詞だけは好き。
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