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「見切り発車」修行場。二次創作、オリジナルに関わらずジャンル混合短文置き場。                                         版権元とは一切関係ありません。
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 サークルのブログにのっけたことがあるオリジナルの話。
 再録のくせに手直しもしていない(笑





「君は、不死というものが本当にあると思っているのかい?」

 誘われた奥の部屋に入って椅子に腰掛けた瞬間、目の前の人間はそう僕に問いかけた。
 僕はこの問いに驚いた。何故この人がそのようなことを問いかけてくるのか理解できなかった。

「・・・不死であると言われているあなたが、それを問うのですか?」

 僕がこの人を訪ねた理由は、その一点に尽きる。
 不死の存在として世間に知られている存在である人物。今僕が対峙している人こそ、その有名な名を持つ人であった。

「そうだね。しかし本当のことかどうかは君にはまだわからない」
「確かにその通りです。あなたが名乗っている人物の存在はとても有名ですが、あなたが本人かどうかは僕にはわからない」
「でも君は私を訪ねてきた。どうしてかな」
「あなたがその名を名乗ることによって何らかの利益を得ているとは思えないから」

 偽名として有名な人物の名を語る理由は限られる。
 でも今僕が訪ねている場所はとても深い森の奥、人はほとんど踏み入れることのない場所。名を用意する必要がないと思えるほどに人との接触が望めないところだ。

「だから、少なくとも信用に足る人物だと考えました」
「なるほど。20点」
「・・・・・・はい?」

 彼はにやりと口の端を上げてこちらを覗き込んだ。

「確かに私という存在は不死として知られている。しかし世間に知られていることが真実であると断言できるかい?」
「あなたは違うのですか?」
「いいや、私という存在は不死だ。それは真実だよ」

 テストを受けている気分になる。答えを探せと言われているようだ。
 それとも、いたずらに遊ばれているだけなのか。

「君は何故ここに来たんだい?」
「あなたに会いに来ました。不死だと言われるあなたに」
「会うためだけにこのような辺鄙な場所に?」

 可笑しなものを見る目で彼は笑った。
 不思議だが、僕はその笑いに腹が立たなかった。

「不死になりたいからではないのかな?私を訪ねる者は大抵そうだ。金に物を言わせて人を雇い、私を探し出した者もいた」
「・・・不死に、なれるのですか?」
「おや、その様子だと考えもしていなかったというところか」

 彼の言うとおりだった。
 幼い頃からずっとどこかで憧れていた、不思議な存在。
 いるかいないかも分からない、名前だけが一人歩きしている存在。
 お伽話の中の人物が、でも実際にここにいると知って。

 会いたく、なった。それだけ。

「そうかそうか・・・では聞こう。君は『不死』とはどのようにしてもたらされるものだと思う?」

 彼は笑顔で問いを重ねた。
 先程からの試されているような視線は変わらない。

「え、薬とか・・・そういうのがあるとか」

 何を求められているのか全く分からないためあてずっぽうで答える。

「それ、適当に言っただろう」

 笑顔で当てられると気まずい。

「まあ仮に薬だとしようか。ではその薬とはいかなる形状をしているものなのか」
「は、形状・・・?」
「飲み薬だとしてそれは液体か、それとも粒状か。または粉薬?はたまた塗り薬かもしれないね」
「ま、まさか」

 塗り薬はイメージに合わなさ過ぎる。

「見たこともないものなのだから、絶対そうではないとは言い切れないだろう?」

 それには否定できない。
 しかし卑怯ではないだろうか。
 不死であるその人は答えを知っているわけなのだから。

「素質はあるけど、修行が必要かな」
「・・・何の話ですか」
「先人いわく『各地を回り自らの存在を高めるとともに、それを継ぐ者を捜し求めるとよい』・・・あえて留まってみたのも正解だったみたいだ。自分からやってきてくれたわけだし」

 彼は一人で納得して首を縦に振っている。
 同じ部屋にいるのに別世界に旅立たれたようである。

「・・・一体、何を」
「君に不死を引き継いでもらいたいと思ってね」

 あっけらかんと言われたその言葉に、僕は固まった。

「不死を・・・引き継ぐ?僕が不死になるということですか?」
「それは正解であり不正解。君自身は決して不死にはなりえない。だが、不死の存在としてこの世界に生きてもらう」

 楽しそうに彼は微笑んだ。

「これはね、イタズラなんだ。長い時間と大勢の人を巻き込んだ、壮大でちっぽけなイタズラ」

 真っ直ぐ僕の目を見て、彼は続ける。

「私という存在が不死であり得ているのはね、私の名を幾代にも渡って継いで、それを名乗り続けているからなんだ。ただ、それだけなんだ」

「は?」

「私は先代からこの名前と、先代たちの記録が残されているノート、これだけを預かった。そして不死の存在となった」

「い?」

「ただ、それだけなんだ。不死の人間なんて、いないんだよ」

 理解するのに時間がかかって呆然としている僕に、彼はいたずらっ子の幼子のような意地の悪い笑みを浮かべた。

「今回のイタズラは、成功したね」
「せ、成功・・・ですか?」
「そう。これは次代に不死を受け継ぐ者に対する、これまでの不死人からのプレゼントなんだ」

 君は驚いているようだから成功だ、と彼はただ嬉しそうに笑っている。
 ようやく落ち着いてきた僕が理解できたのは、つまりは僕が次の「不死人」を名乗ることを許された、ということで。

「僕が、不死の存在を名乗れ・・・と?」
「ああ、強制はしないよ。もちろん嫌なら全部忘れてここを離れてくれればいい」
「・・・僕が、この事実を世間に公表したら?」

 イタズラなんて意味を成さなくなるだろう。

「まあ、その時はその時さ。イタズラ終了、はいおしまい。私はもう一世一代の大仕事を終えたし、別に困らないよ。大体このイタズラがここまで続いていることも奇跡のようなものだし、これはあくまで次代の不死人に対するイタズラであって世の中に対するものじゃない」

 大したことがないと言うかのようなあっさりとした答えだった。

「それに、君がそんなことをするとは思えないしね。一応人を見る目も先代から学んだつもりだ」

 そう言うと、彼は居直ってこちらに手を差し出してきた。

「さあ、君もこの壮大でちっぽけな『イタズラ』に参加してはくれないか?」



 ・・・僕は、その手を―――






―――――
 余裕があったら続編書きたい。
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