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「見切り発車」修行場。二次創作、オリジナルに関わらずジャンル混合短文置き場。                                         版権元とは一切関係ありません。
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 オリジナルで短文。
 全てを無くして生きていたはずの女性の話。



「それは誰のこと?もう、その名前は捨てたのよ」

 もう父親の顔は覚えていない。



 最低な人だった。

 母親と娘の私を無視して研究にしか興味のなかった人で、挙句の果てに様々な人に多額の借金をしてどこかに逃げおおせた。私たちに残ったのは周囲の人の恨みとありえない額の借金。もともと身体が強くなかった母親はころりと死んだ。結局私に全てのしわ寄せがきた。
 子どもだったから大したお金なんて払えるはずもない。全てを奪われた挙句に私自身も奪われた。私を売った人がどれだけの値段を手に入れることが出来たのかなど、私は知らない。

 何もかもにも諦めていたけれど、それでもまだ望みは残っていた。私を助けてくれる人がいた。
 私はその人に救われて、生きる術を学んだ。過去も名前も全て捨て、ただ私だけのために生きるために強くなろうとした。
 そして、ある時独り立ち。これからは何にも縛られず、ようやく私の道を歩くことが出来ると思っていた。



 父親のことなどもうどうでもいい。どこかでのたれ死んでいようが、生き延びていようが勝手にしていて。
 もう二度と私の人生と交わることがないことだけを、切に願った。






 そして、あの男が今私の目の前にいる。

 目の前のベッドには衰弱し切った痩せこけた男。見た瞬間にフラッシュバックした過去の記憶。
 何度も、何度もうわ言で呟く名前は、過去に捨て去ったはずの懐かしい単語。



「そんな名前知らない、けれど」



 どうして、生きてなんかいるの。
 死んでいてくれればまだ、諦めることもできたのに。



「でも、やっぱり、あんたは私の父親なんだよ」



 それでもまだ、私には父親を思う気持ちが残っていることを、知ってしまった。










―――――
 こんな感じのキャラをTRPGでやろうとして(美化)、ツンデレといわれた。
 そんなつもり、なかったのに。
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