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「見切り発車」修行場。二次創作、オリジナルに関わらずジャンル混合短文置き場。                                         版権元とは一切関係ありません。
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 14日まで何とかバレンタインネタを持続させてみよう企画最終回。

 昨日の予告どおり、ペルソナ3正規ルートの2月。
 やっぱりアイギスなのです。





 感情能力のテストとして月光館学園に通っている少女の姿をした機械が、巌戸台分寮にいる。
 彼女―機械をそうカウントしてよいかは疑問だが―は、少々特殊な環境にあるその寮で、人の感情を学ぶために学校生活を営んでいるのだ。

 だが、アイギスはその寮にいる生徒と会話をしたことがほとんどない。すれ違えば挨拶をする、そんな程度。
 彼女を造り出した桐条グループの息女が同じ寮に暮らしており、少女の姿をした機械が話す相手と言えばそれくらいだ。彼女とは夏祭りにも共に行ったと記憶しているが、そこまで仲良く会話をしていたのかどうか記憶にない。まず何故夏祭りになど行ったのか。
 他の寮生などは話したことすらない者もいるように記憶している。

 特に、常にヘッドフォンをしている小柄な男子生徒――彼などは、隣室の男子生徒とともに多少会話しているのを見たくらいで、彼自身は積極的に話す性質ではないらしい。彼の声をはっきりと聞いたことは、アイギスの記憶の中ではない。
 しかし、それでも何故か――彼女の中に残る声がある。

 その声はどこか、その男子生徒の声に似ている気がするのだ。



 ――ありがとう。






 2月も中頃に差し迫ってきた頃、アイギスがふと気が付いたときそれは手元にあった。
 財布も一緒に外に出していたので、それはアイギス自身が買ったものであるのだろう。

 ラッピングされた、チョコレート。

 何故だろう。アイギスはそういった行事とは無縁のはずなのに。
 それを握り締め、アイギスは店の前で立ち尽くしていた。



 ――私は、あなたにチョコレートを送りたいのです。

 ――・・・

 ――ご迷惑でしょうか?

 ――その前に、2月を迎えないとね。

 ――もちろんです。私が、貴方に想いを伝えるためにも――世界は、終わらせません。

 ――・・・

 ――私は私に命じます。『アイギス』が貴方に気持ちを伝えるために、2月14日をもたらすことを。

 ――アイギス。

 ――はい。

 ――ありがとう。



 あの声を、もう一度はっきりと聞きたくて、でも、どうすればその声が聞けるのか分からなくて。






 長い時と惑いを経てようやくアイギスの心を構成するピースを作り出すことが出来たというのに、彼女は出揃ったピースを見失ってしまった。

 欠けたピースの一つが揃い、彼女は今チョコレートを手にしている。



 しかし、そのピースをはめる場所を見つけることだけは、どうしても出来なかった。

 アイギスは、結局そのチョコレートを渡す相手を見出すことは出来なかった。



 全てのピースが揃いその形を成すまで、あと半月。






―――――
 本当は訳がわからないまま美鶴にチョコレートの作り方の教えを乞うアイギスとかも書きたかったのですが、うまくまとめられそうになかったので却下。

 5日間何とか続きました・・・お付き合いしてくださった方どうもありがとうございます。

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